保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』を読んでの続き。

物語とは小説とは何か。実は、保坂和志さんの本を読んですごく揺れ動いてしまった。私もマニュアル・テクニック本の影響が読んでないのに強かったわけだ。

私の敬愛する小説家の書く事への話を要約(文責:奈良たかし)。

◎恩田陸
 小説とは、もっと年を取ってから書くものだと思っていたら「後宮小説」で同年代の酒見賢一さんが、日本ファンタジーノベル大賞を取ったので、ショックを受けた。自分も「六番目の小夜子」で同賞に応募したら最終候補となって出版された。そして下積みがなかったから量を書くことで修行としたいと依頼された仕事を何でも受けて多作をこなしていた。
 有名作家となったら今度は、量を書くことで職人のように高みを目指すと相変わらず多作。現在で月8本の連載を抱えている。しかし最近、職人のようにたくさん作ることで小説がレベルアップするわけではないらしいと思うようになった。
 一年に読む本は、200冊、観劇、コンサートと趣味は多様。ついに「演劇集団キャラメルボックス」用に舞台脚本「猫と針」まで書いた。

◎桜庭一樹 
 小学生の頃から、本をもらうと喜ぶので名作全集を祖母の所に行くたびに一冊ずつ贈られた。
 それで。すっかり海外文学の文章になれてしまい、学生の時に、夏目漱石を読んだら読めなくて無理にかみ砕いて飲み込むような形になった。今も海外文学の方を多く読む。年間400冊という多続である。おもしろい小説は多く、そんな小説を書きたいと念願している。
『赤朽葉家の伝説』で、直木賞候補になったとき落選したが、
「鮮烈な印象を残した選評がありました。」選考委員の浅田次郎が、
「年若い候補者たちに投げかけた言葉です。
 「悪意の不在は作者の世界観に拠るところであるが、苦悩の不在は文学の背骨そのものの不在であろう」
 わたしに言われたんじゃないもん、などと考えてはいけない気がしたし、自分は書けてるもん、と終わらせたらだめだなぁと思いました。それから半年のあいだ、おおげさではなく、毎日毎日、これについて考え続けていました。日中もですが、夜になって眠ろうと電気を消すと、思いだしてしまって暗闇で目がピカリと光り、ぜんぜん眠れませんでした。

 平和な時代でも、恵まれた世代でも、関係なく、生きてさえいれば苦悩は存在すると思います。だけどもわたしたちはいま、そのことを、世代のちがう相手に伝えあえないでいる気がする。父母の世代の、見えざる苦悩に思いを馳せ……、自分の世代を代弁せんと考えこみ……、もっと年若い人たちの息苦しさももちろん……、わたしは小説家としてなんとか表現したいと思いました。みんなが感じているけれど、いまだ言葉にされて「形」を与えられていない感情。それを「物語」にして提示するのが、小説家の大事な仕事の一つなのではないか、とも考えました。」
「 『私の男』は、言葉にされて「形」を与えられたことのない、しかし時代や世代に関係なく誰の心にも巣くっているはずのある「苦悩」、つまり異性の親や子に対する、人間のエゴイスティックな慕情について、提示せんとした作品です。わたしはこのテーマを描こうとしたとき、反道徳的であることや批判を恐れず、小説家が社会に対してできる仕事をしたい、と考えました。」
引用:「桜庭一樹 直木賞受賞によせて 世代超え「苦悩」伝える」

 文学は何ができるかを、特に桜庭一樹さんのエピソードでは考えてしまう。
 派遣切りで若い人たちが、寒空の中で路頭に迷っている。
 しかも、世界ではガザが爆撃され、子供たちの体がバラバラになり死んでいる。そのエントリーの間にこの文章を書いているのだから。
古い言葉だが「飢えた子供を前にして文学は何ができるか」をもう一度深く考えたい。でも文学は必要なのだと。生きる上で物語はどうしてもいるものだと。
 でも昔のような社会主義リアリズムなんてまっぴらだが。
関連記事

FC2blog テーマ:エッセイ - ジャンル:小説・文学

【2008/12/30 01:26】 | 奈良たかし・本の話
トラックバック(0) |  ]

どうもありがとうごさいます
奈良たかし
 うわー、実は初めてのコメントです。
ミカさん
ほんとうにありがとうございます。
社会のことと文化のこと両立させて読んでおもしろいブログを目指してがんばりたいです。今後とも、応援よろしく。

はじめまして
ミカ
初めてコメントさせていただきます。
父にこのブログを教えてもらい、楽しみにしながら見ていますw
応援しています。


コメントを閉じる▲
コメント
この記事へのコメント
どうもありがとうごさいます
 うわー、実は初めてのコメントです。
ミカさん
ほんとうにありがとうございます。
社会のことと文化のこと両立させて読んでおもしろいブログを目指してがんばりたいです。今後とも、応援よろしく。
2008/12/30(Tue) 13:51 | URL  | 奈良たかし #-[ 編集]
はじめまして
初めてコメントさせていただきます。
父にこのブログを教えてもらい、楽しみにしながら見ていますw
応援しています。
2008/12/30(Tue) 13:00 | URL  | ミカ #-[ 編集]
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 


トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック