獣の奏者 (3)探求編獣の奏者 (3)探求編
(2009/08/11)
上橋 菜穂子

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獣の奏者 (4)完結編獣の奏者 (4)完結編
(2009/08/11)
上橋 菜穂子

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 あまりに心が重い。『獣の奏者』Ⅲ巻 探求編を読んだが、その後なかなかⅣ巻完結編を読めなかった。その死の雰囲気があまりに漂っていて手を出せなかったのだ。エリンは私の心の中でしっかりと生きていたのだ。死、し、なぜエリンに死の影がさすのだろう。Ⅰ巻で母が凄惨な死を遂げてエリンは父方の祖父とも隔絶して孤児になる。そしてやっと結婚して家庭を築き11年間。ジェシという男の子にも恵まれやっと幸せをつかんだのに。

 リョザ神王国の外で生きていけないエリンは、国王である真王に戦争へと命じられ、仕方なく引き受ける。王国では最終兵器となっていた闘舵の秘密が漏れラーガ国という遠方の大国が闘舵部隊を編成して攻めてきたのだ。エリンはすべての問題を1人で引き受け自分の指示で動く王獣部隊をつくり闘いに臨む。

 まじめさが災いするのだ。戦争になろうとするときまじめだと利用されてしまう。闘舵も、謎を突き詰める中でわざと繁殖力を弱めた規制をしていることを突き止めてしまい国はそれを取っ払いより強く大きくする飼育法をとるようになる。

戦争の秘密は必ず漏れ、相手も同様に対抗して装備する。世の理である。そしてリョザ神王国がかつて行っていた闘舵を弱めるような方式ではなく、相手も強い闘舵で戦闘部隊を組む。だがそれに王獣を対峙させたとき「災い」が始まる。それは人工的に強く育てられた闘舵が体内に毒性を強く持つことから始まる。王獣との闘いになって代謝はより激しくなり毒霧をまき散らす。それは王獣さえ狂わしてしまいふだんならたちどころに闘舵を打ち破るのに相争う形となり、闘舵、王獣そろって狂乱して毒は一層噴出し暴れ狂い人と都市を殺し破壊し尽くす。
これこそが災いだった。

 エリンは自らを犠牲にして災いを止める。しかしラーガ国兵士も含めて凄惨な死は完全には止められない。
 エリンの行為を英雄視しないため注意がはらわれ、死を目前にした4日間でエリンが口述した闘舵と王獣の人工飼育と戦いの結果である災いの内容が出版という形で公開され、広く伝えられた。大人になったジェシは獣医師となり学校でも母と同じように教えるがそれを自ら伝えるため「その後母は四日間生きた」といい、戦いの悲惨さを語る。このシーンにふるえた。だがあまりに苦い。

 しかし、戦争は止まるのだろうか。ラーガ国は強化飼育はやめても、薄磁水でギョザ神王国と同様に毒性のない時間がかかる方式で闘舵部隊を育成するだろう。そうなると日数はかかるがまた戦いを次の代くらいに仕掛けてくるのではないか。そうするとリョザ神王国内は、またもや王獣部隊を使おうとするのではないか。

 この「獣の奏者」の世界で平和を維持するのはあまりに難しい。経済が絡み、初めは侵略に対し闘舵部隊を整備した。そして侵入してこようとした相手を逆に打ち負かし、これまで領土と経済利権を広げてきた。だから同様の方法で戦を仕掛けられる。
 話し合いの予兆は示されているので何とか安定的な関係を築けないかと思う。これは現代にも通じる話である。
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【2009/11/30 23:41】 | 奈良たかし・本の話
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2015/04/17(Fri) 16:20 |   |  #[ 編集]
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