阿部寛がうまいなとまず感じた。彼はエキセレントな役とか際立った役、特異な人をずっと演じてきたからこういうホームドラマで普通の人をやって静かにうまいと、驚くのだ。

 物語は、阿部演じる横山良多が夏に横浜の実家に帰るところから始まる。しかも結婚予定の同棲相手のゆかりと連れ子を伴ってである。良多の姉も夫子家族連れで帰省。それは15年前近くの海で子供を助けて自分は水死した長男の命日のためだとわかってくる。

 父は開業医だったが引退、樹木希林演じる老いた母は久しぶりに集まった家族の世話を焼くのに元気を出して忙しい。でも良多は医師になれず絵画修復師になって、40歳になっても父親へのコンプレックスと反発がある。しかも両親姉に隠しているが失業中なのだ。少し軋轢と反目、そして何気ない親しみ、家族だからこその平穏と波乱が見え隠れする。
  シーンで感心したのは、トウモロコシの天ぷらのために手で実をこそぎ取る。良多が「うまいだろう、昔から俺の役目なんだ。」という、さりげない場面で家族の味が漂うのだ。

 それと、ゆかり役夏川結衣が、電車内で40歳の落ち着きを見せ、同棲・結婚相手の良多の家に来たという居心地の悪さと緊張のなかで、しっとりとした魅力でかがやきを見せて、存在感のある演技でいっそうの進展を示している。特にパジャマを良多のものしか買っておいてくれないと不満をいうときがよかった。

 樹木希林の演技が素晴らしい。そして蝶は死者の魂の返りだとのエピソードが出色で、このクライマックスでの蝶を追い見守る樹木希林の気迫の演技はみごとだ。
 助けた子供も毎年よばれるが、すでに25歳、太ったフリーターである。良多役の阿部が「もうよぶのをやめよう。彼もつらそうだから。」というが、母とし子役の樹木希林は「つらく思ってもらうためによぶの、ずっと。あの子のせいで死んだのだから。大人になっても、つらく感じてもらわねば。」という。

 「ここで意地悪を感じた」と知り合いが言った。おおかたがそうなのだろうか。でも本当に憎いのなら顔も見たくないと、よばないだろう。長男が死んだからあの子が生きているという思いがあるのだ。

 是枝監督のオリジナル脚本がすばらしい。日常の中のゆたかな話で感心する。

 しかし、なおも家族というのは難しいものだと思うのだ。
公式サイト
http://www.aruitemo.com/top.html

[予告編]

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【2009/01/25 14:34】 | 映画
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