小説家の中には、人を見下してしまう人が結構いる。人の真実と思い込んでさげすんで無能でやる気も能力もないものだと思い書いてしまうのだ。そんなことはない。みんな馬鹿ではないのだからお人よしのことばかりするわけがないし、エゴに満ちているが善意のこともする。

 ある日「本の雑誌」で北上次郎が『漁港の肉子ちゃん』西加奈子著を評価していた。ところが読むとまるで見当外れの小説で愚かな女が人の子供を育てる話だった。男の言うことなら何でも信じるしだまされてばかりなのに朗らか。漁港の街で作者が勝手に登場人物を思いついて小説にした。作家も評論家もどうかしている。
そういえば戦前の小説にそんな馬鹿な女を書いたのがあった。あまりに古めかしいのだ。

漫画でこんな古めかしい設定があっただろうか。それを褒める愚かな評論家がいただろうか。こんな状態ではいけない。

小説とは人を動かすほどの大きな力を持っているものだ。人の人生を変えることができる。こういうもっと人の核心に迫る小説を読みたい。若いころ母子家庭でこれから母を助けると信じていた時に母を亡くした山本一力さんの出会いのように。
http://book.asahi.com/mybook/TKY200807300188.html

FC2blog テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

【2012/01/15 16:48】 | 奈良たかし・本の話
トラックバック(1) |  ]
 アメリカ第二の巨大書店会社、ボーダーズグループがアマゾンなどネット販売と電子書籍に押されたことが原因で週明けにも倒産申請する。ボーダーズグループは、アメリカ国内に約500のボーダーズ店と、ショッピングモール内のテナントとして、約170店を経営している。本のほかにCD、DVD、定期刊行物、ギフトと文房具を販売している。
 これほどの大企業があっけなくつぶれたのだ。衝撃である。何しろ昨年度は第三四半期までで74万4千ドルもの大赤字を計上しており、ほぼ経営は行き詰っていたのだ。2006年1月期以降、5期連続で純利益が赤字となったのだ。現在の負債総額は10億ドル(約830億円)を超える。申請後も営業は継続するが、再建計画では約670ある店舗のうち約200店を閉鎖し、約2万人の従業員も数千人規模で削減する予定だ。

(英語)http://www.annarbor.com/business-review/
borders-group-merger-or-bankruptcy-filing-
inevitable-expert-says


 つい最近まで全米第一位の書店グループ、バーンズ・アンド・ノーブルとの合併や金融機関の支援など経営支援の調整が持たれていたようだが、これは不調に終わった。もはやバーンズ・アンド・ノーブルとの合併など弱者の連合と化してしまうのだ。
創業者で筆頭株主のレナード・リッジオ氏は昨年8月始めに取締役会に対し、同社を身売りしたいと報告しているほどなのだ。これも電子書籍に浸食され売り上げが急激に落ちたせいだ。
 しかもバーンズはアマゾンの電子書籍端末キンドルに対抗して独自の端末を開発し早めに販売しているのにだ。

http://jp.reuters.com/article/
businessNews/idJPJAPAN-16637520100804


 日本では書店はどうなるか。いよいよわからなくなってきた。

 確かに再販制度もあるし、アメリカの書店企業と比べれば守られている。でも街の書店は次々と出版不況で消えている。
 日本第二の巨大書店グループのジュンク堂は、書店グループ丸善と共同店舗を作りより巨大店とすることでネット販売に対抗しようとしている。

 電子書籍で儲かるのはアマゾンや端末製造の企業だけだと言われている。もし仮に出版社や書店が行き詰っても著者や編集たちなど創作のための人材が経済的に潤い生き残っていけるのだろうか。もはやそういうことを真剣に論議すべき時が来たのではないだろうか。

【2011/02/12 20:37】 | 奈良たかし・本の話
トラックバック(0) |  ]

何てこと!
yamagatakouichi
 書店が危機的状態にあるというのは知っていましたが、そこまで追い詰められていたとは! 私たちはもっと本を買うようにしなければいけませんね。

コメントを閉じる▲
 最近本を読む人でも本屋に行って本を買ってもいい本がないという声を聞きます。

 私は、かなり本を買い読んでいますが、おなじみの著者の本も買いますが、ほかに今も本屋で今までに知らない著者の本を見つけることも多いのです。きちんと自分が読みたい本を見つけています。
 ではなぜ多くの人がスカ本ばかり手に取るようになるか。それは出版点数の増加にあります。

「この15年で年間新刊発行点数は倍になった。さらに15年を遡ると約半分である。つまりおよそ30年間で4倍になったのだ。」『本の現場-本はどう生まれ、だれに読まれているか』永江朗 ポット出版
これで本屋に行っても昔よりは書店に並ぶ時間も約4分の1となり、しかも多すぎて見つけられないのです。それで売上ベストテンに頼る読書がはやる。でも自分の読みたい本は出てこないでスカばかりになる。

 私の場合、人文書が中心ですが、普通の人より2.5~3倍くらいの速さで読めるので本屋さんでかなり冒頭60ページとあたりを付けた飛ばし読みで中身がいい本かわかるのでハズレは基本的にないのですね。ただし、自分に合わなくても調査や知識のために買うことはあってそれが読めない場合がありますが。
 それと合った本を探すレーザー機能が鋭いのです。背表紙を見ていたら「読んでほしい」と呼ばれたりします。平積みの本でも気になる本はだいたい何となくわかります。

 本が速く読めるようになるというのをせわしないからいやだという人がいます。それはあまり読まない人の思い込みに基づく誤解なのです。実はいかなる速読も本をゆっくりと読むということなのです。これはわかっていただけるかと思いますが、ゆっくりというのは相対的な感覚なのです。ということはある程度速度をセーブすればいいのです。私ももう少し早くして飛ばせば3~3.5倍くらいの速さで読めます。でも、セーブして2.5~3倍で読んでいます。だから、時々止まり考え、戻り読んで、ゆったりとした読書でそういう速さなのです。もちろんもっと考えたければ読書が終わってその部分を開いて考えますが。

 これは何も速読教室に通ったわけではなくて多くの本を読む中で徐々に身につけた自然速読です。なお、ブロック読みを進める本や速読教室は多いですが、あれは無意識のうちに飛ばし読みや斜め読み、拾い読みをして実際は精読していないのでご注意ください。
 過去にNHKTV「ためしてガッテン」でブロック読みと一般読みで、その中身を詳細に聞く調査をしてみたらそういう結果が出ています。
 それを講師として教室を開いていた人まで、そんなことはない、と怒ってそれをやってみたら生徒も自分までもそうだったのです。悲喜劇です。結局いつも聞いていたのは詳しい内容ではなくてどんな本だったか漠然としたものなので飛ばし読みなどわからないのです。

 速読はなかなか進まないと思いますので、レーザー機能を鍛えるべきでは。なんとなく気になる本がそもそも自分に合った本というところまで。

FC2blog テーマ:本屋・図書館に入浸り - ジャンル:本・雑誌

【2010/07/11 16:11】 | 奈良たかし・本の話
トラックバック(0) |  ]
 作家の豊島ミホさんが2009年末で休筆した。理由は本が売れないことと、自分が書きたい本の分野と売れて求められている小説分野が大きくずれているのではと思ったこと。

 でも、豊島さんの本は順調に出ている。小説家を目指す人は多くてあまりのことにショックを受けた人は多いのではないだろうか。だいたい休筆するために、2008年5月から一切の仕事を断り続けていたそうなのだ。2009年の中ごろまで執筆が続き、それで山形に帰ったのだが作品はその後も出て2009年12月の休筆まで1年7カ月もかかったのだ。それくらい継続的に仕事の依頼はあったわけだ。これから小説家になろうとする人、豊島さんより売れていない小説家はいっぱいいたわけで冗談じゃないという気持ちになっただろう。

 休筆前最終刊のエッセイ『やさぐれるには、まだ早い!』(2009年12月)を読んでみると、
小説を書くことがあまり好きではなく、職業として選んだ、
死ぬほど働いてもみ合うほど売れない。
賞など何も選ばれず評価されない。

と書かれていた。それで仕方ないかなと思ってしまった。

 ところがである。最近豊島さんの最後の小説である『リテイク・シックスティーン』(2009年11月刊)をしばらく前に読んでみて、その文章や構成のすばらしさに打たれた。私が豊島ミホ作品で他に読んでいるのは高校生活をつづった『底辺女子高生』だけだが、大きな進化が起こっていた。女子高生が生き生きとして現実の中をさまよい、抜け出していく。休筆時にまだ27歳。これからも大きな進展があったはずなのに。

 それで心の中で大きく叫んでしまった。なぜ、こんなすばらしい小説を書ける人が休筆せねばならない。
 それと、高校生の話だけを書いていきたいのかな、それだけでは難しいのではという気持ちはあったが、それは若者の範囲を広げていくことで何とかなる。現にそういう小説家はいる。

 だが、努力して書いても見合うほど売れないということ、小説を書くのが好きでないことにどうすべきかわからずモヤモヤは続いていた。

ところが、森博嗣『小説家という職業』を読んで、大きなヒントを得た。

 これで驚いたのは、森博嗣さんほどの売れっ子の小説家でも、小説を書くのが嫌いだし、1年に一番読んだときでも30冊くらい、最近は3冊ぐらいしか読まないということだ。大学の工学部の研究者で学生教育も担当している。

 書き始めたのは1995年37歳で職業的なウイークポイントにあって、まず娘に読ませたいと書いた。ためしに講談社のメフィストという雑誌の編集部に送付してみたら、ぜひ出版したいと言われた。その時にはシリーズ2作目も書いていてやがて3作目も書いて渡した。すると、まだ書いていない次の4作目を出版したいと言われた。それで4作目『すべてがFになる』が初出版となり、後から1、2、3作が出版された。

 過去のような1冊が大部数売れることはないが、ノンフィクションと比べて一人の小説の愛読者は大量に読むことが多いのでやはり小説は他の本に比べて売れる。ただし小粒になったので数で勝負し、たくさん出す。英語圏に比べると市場はせまいが、シリーズものを出すことで人物造形などで効率化が図れる。それに書いていると次々と発想は浮かぶので書くことはできる。小説を読む人口は数十万人にすぎずマイナーなものである。

 ネット時代の対応。
早くに自分のサイトを設けていた。

 メールアドレスを公開し、読者のメールには必ず返事を12年間続けて2008年の最近まで返信していた。読者をつかんでいく方法なのだ。
現代はネットで出版社や編集者より作家自身が、要望や感想、思いなど読者との距離は近い。だが、その通りせずある意味で裏切ったものを出していく。今までにない新しいもの、珍しいものはマイナーであるが必ずニーズがある。しかし、マイナーであっても必ずネットで伝わり売れる。

 批判や悪口も来るがそれは読んだから来るのであってそれに負けていたら作家の創作などできない。ブログに書かれた感想もできるだけ読んでいる。出版社は所詮は自分たちで書いているのではなくすべて原稿からデザイン印刷製本まで外注するいわば商社なのでユーザーの感想など集める努力をしていない。

 ネット時代は、作品の謎を完成させず本ではわからないままや複数に考えられるままにしておいていい。ネット上で読者が討論したり考えられる。それがまた作品の世界を広げる。
 なるほど。それで『スカイクロラ』シリーズなどみごとにはまってしまい謎を追及しているわけだ。

 ブログソフトができる以前に日記という形で「近況報告」を自分というものを公開していた。どうしても作家がどんな人か読者には気になるからだ。知ってもらうことでまた小説を続けて読んでもらえる。日記は続けて18冊、日記以外に10冊出版した。

 将来に向かって3年先からもう少し10年くらい先までいつまでに何を書きシリーズはどう展開するのかだいたいの方針を作る。そして締め切りは必ず守る。

 新聞やテレビ広告では実験してみたが本は売れない。だから10万部売れる本を作るのは難しいが、1万部売れる本を10冊作ることは何とかできる。方法としては地道に本をたくさん出すことしかない。

 ここには、小説を書くことを愛するのではなく、小説を書くのが嫌いでも職業として小説家になった人の冷徹な判断と方法がそこにある。森博嗣さんがこういう方法を公開したのは後4冊くらいで小説家として引退することを決めているからだ。

 そういう意味では、豊島ミホさんは、「告知版としま」http://fengdao.exblog.jp/として一方通行のブログは作っていたが、コメント欄もなく、アドレス公開もメールフォームしていなかった。連絡方法がない。もちろん作家というのは小心で傷つきやすいから批判や悪口がいやだったのだろう。でも今は作家と読者がこれだけ近いのだから、本を売るためには読者とのアクセス方法を設けるのは大切なのではないだろうか。それならメールフォームよりは、メールアドレス公開がいい。あまりにいたずらがひどい場合はその人のアドレスだけブロックすればいいのだ。
それに豊島さんが気にした編集者のつかんでいる読者の求めている傾向などあてにならない。押しつけられはしなかったと豊島さんは書いていたが雑談などでやんわりと示されたと思うからだ。しかし読者に一番近いのは作者自身なのだから。しかもそれを裏切ってマイナーな方向に行かねばならない。しかし、これは豊島さんにぴたりではないのでしょうか。

 前に、直木賞作家の絲山秋子さんが、出版社は作家を育ててくれるのでこれで安心だとWEB日記に書いていたが、森博嗣さんに言わせるとそんな余裕は今の出版社にはなく目先のことで精いっぱいだそうだ。

 作家は電子出版のことも含めて、フォローは受けながらも自分で進んでいく時代に入ったのだと思う。
 豊島ミホさんは、幻冬舎に見いだされた作家だが、基本的なフォローはなかった。別に大金を社員に使い込まれて余裕がなかったせいだけではないようだ。自分で進まねばならないようだ。

 豊島ミホさんは故郷の山形に帰って家事手伝いをしているが、何年か他の職業に就いたうえで、森博嗣さんのアドバイスを参考にして戻ってきて売れる作家になるよう再挑戦してほしいとしみじみと思ってしまう。

リテイク・シックスティーンリテイク・シックスティーン
(2009/11)
豊島 ミホ

商品詳細を見る


やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)
(2009/12/02)
豊島ミホ

商品詳細を見る


小説家という職業 (集英社新書)小説家という職業 (集英社新書)
(2010/06/17)
森 博嗣

商品詳細を見る

FC2blog テーマ:小説家 - ジャンル:小説・文学

【2010/06/24 00:00】 | 奈良たかし・本の話
トラックバック(1) |  ]
私の家では何も起こらない (幽BOOKS)私の家では何も起こらない (幽BOOKS)
(2010/01/06)
恩田 陸

商品詳細を見る

大好きな恩田陸の本なのに、雑誌「ダ・ビィンチ」にインタビューが載って楽しみにしていたのに。

 何か媚びていて、グロテスクにしていたら受けるんじゃないかという感じが露骨なのだ。
 たとえば、古代の塚の上に建っているというのならもっといろいろ書くことがあるはずなのにそれもない。

 これは恩田陸の書くような話ではない、しみじみそう思う。

FC2blog テーマ:恩田陸 - ジャンル:小説・文学

【2010/04/19 01:18】 | 奈良たかし・本の話
トラックバック(1) |  ]