NHKが、直木賞候補にもなった辻村深月さんの小説「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」をプレミアムチャンネルでのBSドラマ化を企画し著作権管理委託者の講談社が昨年2011年11月許諾した。だが原作者が脚本チェックしてNHKとも修正の話し合いしていたが納得できないと撮影開始直前の今年2月に許諾を取り消した。
 訴状によると、すでにキャスティングも主演の長澤まさみをはじめとして決まりキャンセル料が発生した。脚本も完成、美術製作も終わり、莫大な損害と撮影開始直前の中止は例が無くドラマ制作での信用が低下したと、NHKが講談社を相手取り約5,980万円の損害賠償を求め、2012年6月21日東京地裁に提訴した。
「テレビドラマができるまで」 http://www.tohogakuen.ac.jp/enta/tv.php 撮影本番まで凄く手間がかかっている

 両社間で書面での契約書は作成されてなく、NHK側の主張では、”テレビドラマの制作では番組完成後に契約書を作成する慣行がある”とし、「担当者間の口頭の了承があり、契約は成立している」という。

 講談社側は、主人公とその母親の関係の表現方法など「原作の改変が著者の意向に大きく反していたことから、NHKと話し合いを続けていましたが、合意に至らず、ドラマ化を見送りたいと、お伝えしました。このような事態になり、大変残念です」とコメント。確かにドラマ化の内容をめぐるトラブルは多いが提訴までするのは異例だ。いったいなぜこんなことに。

 大した問題ではないと思う方もいるだろうが、数多くの賞に輝くNHKドラマ「ハゲタカ」を絶賛する方は多い。外資ファンドと日本の銀行の金融の世界の利益至上主義の酷薄さを鋭い視点で描き、娯楽性も高水準にある。この真山仁の原作発行元は講談社なのだ。あるいは近代歴史ドラマとして評価の高い浅田次郎原作「蒼穹の昴」も同社刊。このまま両社の亀裂が修復ならねば数多い講談社刊行小説のドラマ化は難しくなってしまう。

 NHKと講談社は、最近の2010年に放送された池井戸潤さん原作の「鉄の骨」まで良好な関係が続いていたのだ。
 他の民放では、これらの大型ドラマの制作など考えられない。日本最大の出版社である講談社とドラマ制作に長けたNHKは良質な作品を多く生み出してきた。この二社の争いはあまりに文化的な損失が大きく不毛なのだ。

 このトラブルはNHKから今年2012年1月10日から3月13日にかけて放映された、この時は「角川書店」が出した、辻村深月さん原作の「本日は大安なり」のドラマ化がきっかけになっていると思う。
 原作は、第24回山本周五郎賞候補作になったように、結婚式という人生の大事な節目の儀式に向かい合う4組のカップルと関係する人たちの哀歓をしっとりと描いた秀作なのに、ドラマは安っぽいドタバタのサスペンス調コメディーに改変されていたのだ。しかもお世辞にも良作ではなかった。

 以前のドラマ化でも、漫画原作の神尾葉子さんの傑作「キャットストリート」集英社刊、犯罪的なものや暗い部分などの重要な設定が完全削除され、情緒的な波はあるが、ただのこじんまりとした元気物語に改変されてしまい、かなりその良さが損なわれた。
 柳沼行さん「二つのスピカ」メディアファクトリー刊、明暗部分はなくなり宇宙飛行士への成長ドラマに。
 そして「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」原作は幼馴染が人を殺す話でそれをNHKでやろうとするとかなり脚色は入る。

 だから辻村深月さんの原作と違うという怒りはよくわかる。でもそれを超えて言いたいのは、原作とドラマは別だ、ということ。原作者が脚本チェックして、完全に脚色するなというのは無理がある。あくまでも原作とそれを使用したドラマとは別作品なのだ。したがって、話し合いし修正した、というNHK側に理があると思うのだ。辻村深月さん、何とか怒りを抑えてドラマ化に協力し、NHKと講談社の和解に尽力いただけないだろうか。この硬直状態が続くのはあまりに問題が大きい。

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【2012/06/22 16:21】 | テレビ
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