日本の本、そして世界中の本の権利がこのままでは大きく侵害されてしまいそうだ。日本と世界の全書籍の米国内でのデジタルデータベース化を、権利者さんたちが自らが日時を限定されて申請しない限り拒めなくなる。ひどい話だ。この21世紀の話か。

 ことは、googleが全米の大学図書館と提携して「Google Books Library Project」という全部の蔵書をデジタル化する事業を始めた。これは知っているという方も多いかも。

 しかしこれは、著作権切れならまだいいが、著作権が有効なものも含めてだ。ええっなぜそんなことができるの。日本では著作権法違反になって不可能なことだ。

 ところがアメリカの著作権法では使用が公正利用な次のような場合は、著作権があっても使用できるフェアユース条項があるのだ。個々の案件がこれで判断される。
1.利用の目的と性格(営利目的か非営利か等)
2.著作物の性質(高度な創作か事実に基づいたものか等)
3.利用された部分の量と重要性
4.著作物の潜在的価値に対する利用の及ぼす影響(著作者が損をするか等)

 それで3年前、これはおかしいと、全米作家組合と全米出版社協会が、「著作権への重大な侵害」などと訴えた。
 ところが両者は昨年10月に和解で合意したのだ。和解内容は、
1.著作権保護のために設立される非営利機関の費用3450万ドル(約32億円)を払う。

2.これまで無断でデジタル化された書籍などの著作権者に対しての補償金総額4500万ドル(約42億円)を払う。

3.著作権者と協力して、ネット上で本を検索・購入できる仕組みを構築する

4.見返りとして同社は、絶版などで米国内で流通していないと判断した書籍のデジタル化を継続する。

5.書籍データベースアクセス権の販売や、広告掲載などの権利を取得する。

6.対象書籍に関連して同社が今後得る総収入の63%を著作者らに分配する。

 ところがこれが集団訴訟だった。これは原告が、利害関係を共有する人を代表して提訴する。この「代表訴訟」は、判決や和解の効力が、直接の原告以外の利害関係者全員に及ぶのだ。つまり、今回の和解の効力は「米国内のあらゆる『絶版本』や流通していない本」に及ぶ。著作権があるが絶版している本や品切れ本にも適用される。

 ところが多くの国が参加する著作権に関するベルヌ条約があって、その国では他国の著作物でもその国の著作権法がダイレクトに無条件で適用される。従って米国内に持ち込まれた、日本の絶版本や、もっと問題になるのが品切れ本や販売後何年もたって出版社に在庫されている本、あるいは米国内で販売されていない本も、いやおうなくこの和解条項が適用され、googleにより米国内でデータベース化されるのだ。そしてインターネットを通じて世界中で見ることができる。今年の夏にも連邦裁判所の認可が出る。

 絶版本も、日本では単行本で絶版になっても文庫で出るのが当たり前の国だ。流通は2、3年だがそういう本も出版社で長く在庫もしている。そしてアメリカで販売はしていないが日本では書店で何年も置いてあるような本もある。それらも流通していない本だとされるのでは。
 アメリカと全く出版事情が違うがまるで無視されている。

 いやならなんと申請せねばならない。著作権者は、オンライン上での使用を望まない場合、2011年4月5日まで、同社側に自著の削除を求めることができる。さらに、和解に拘束されることを望まない著作権者に対しては、和解からの「除外」を認め、今年5月5日を除外通告期限としている。そういう、「法廷通知」の広告が24日、「読売新聞」や「朝日新聞」などに掲載されたのだ。ええっと驚いたときにはこんなことをするぞって言われたのだ。

 googleは、うまく米国集団訴訟という制度を利用して日本と世界相手に権利侵害を合法化したという形だ。むりやりという感じが濃厚な状態なのだ。

 これは、露骨であからさまなアメリカ基準の無体な押しつけであり、すさまじい文化破壊なのだ。

 Googleと、全米作家組合と全米出版社協会に抗議すべきだし、こんな悪質なやり方をする和解を認可しないように、米国連邦裁判所に申し立てる必要がある。また、集団訴訟法を修正するよう日本政府は日米協議すべきだ。今までは言われっぱなしで唯々諾々と従うばかりだがそれを改めるべきだ。

 そして、インターネットとデジタル時代に入って、こんなめちゃくちゃなことが起きないようにベルヌ条約をただちに改定する必要があると思うのだ。
 でも、一切の論議が起きない。どういうことだ。本なんてどうでもいいのだろうか。


米グーグル書籍DB化、申請なければ日本の作家拒めず
http://www.yomiuri.co.jp/net/
news/20090225nt01.htm


 検索大手グーグルが進めている書籍全文のデータベース化を巡って、同社と米国の著作者らが争っていた集団訴訟が和解に達し、その効力が日本の著作者にも及ぶとする「法定通知」が24日の読売新聞などに広告として掲載された。

 著作者らが自ら申請をしなければ、米国内でのデータベース化を拒めない内容で、日本の作家らには戸惑いもある。

米・集団訴訟和解が日本にも効力
 集団訴訟が起こされたのは2005年。米国内の大学図書館などと提携し、蔵書をデジタル化して蓄積する計画を進めていたグーグルに対し、全米作家組合と全米出版社協会が、「著作権への重大な侵害」などとして訴えた。両者は昨年10月に和解で合意、今夏にも出される連邦裁判所の認可を待って発効する。

 合意の対象は、今年1月5日以前に出版された書籍で、同社は、〈1〉著作権保護のために設立される非営利機関の費用3450万ドル(約32億円)〈2〉無断でデジタル化された書籍などの著作権者に対しての補償金総額4500万ドル(約42億円)以上をそれぞれ支払う。見返りとして同社は、絶版などで米国内で流通していないと判断した書籍のデジタル化を継続し、書籍データベースアクセス権の販売や、広告掲載などの権利を取得することが定められた。また、対象書籍に関連して同社が今後得る総収入の63%を著作者らに分配することも決まった。

 また、著作権者は、オンライン上での使用を望まない場合、2011年4月5日まで、同社側に自著の削除を求めることができる。さらに、和解に拘束されることを望まない著作権者に対しては、和解からの「除外」を認め、今年5月5日を除外通告期限としている。

 和解の効力は米国での著作権を有する人すべてが対象となる。著作権に関する国際条約「ベルヌ条約」の規定で、加盟国で出版された書籍は、米国内でも著作権が発生するため、影響は世界中に及ぶ。このため法的手続きの一環として、今月に入って、世界200以上の国・地域、72の言語で和解合意内容を伝える通知の掲示が開始された。

 グーグルは和解で、絶版や品切れ状態の書籍本文の入手が容易になると利点を強調、本文閲覧を含む新サービスは米国内の利用者に限られるとしている。ただ、和解に巻き込まれる形になった日本の著作者団体は戸惑いを隠せない。

 日本文芸家協会の三田誠広副理事長は「届け出なければ権利が保障されないのはアメリカ的なやり方だ。アメリカで流通していない日本の新刊書がネット上で見られる恐れがある」と危機感を募らせる。同協会は、3月上旬の理事会で、会員の意思表示の手続き代行などの対応を議論する予定。

 一方、著作権に詳しい福井健策弁護士は「グーグルの説明が分かりにくいのは改善するべきだが、著者や出版社にとって長所も短所もある和解内容だ。音楽のように書籍もネット配信する文化が普及していくのか、注目している」と話す。

 図書館との提携事業は、現在、「googleブック検索」の一部となっており、700万件以上の書籍をデジタル化している。

(2009年2月25日 読売新聞)


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【2009/03/01 20:27】 | 奈良たかし・本の話
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