新藤兼人監督の遺作「一枚のハガキ」を見た。その強烈な迫力はとても百歳の人のものではない。最後に新たな代表作を残し、亡くなったその大きさに震える。

 全てを奪い全ての民衆を殺す戦争。それに振り回され運命が変わる。戦争を起こした者よ。戦争を起こそうとしている者たちよ。この映画はあんたたちを告発する。

 友子は、戦局悪化の中の中年での徴兵で愛する夫を失い、その弟と結婚したがまたも徴兵で戦死。それで敗戦を迎えるが義父母は後を追うように死に、一枚のはがきを託された夫の戦友が訪ねてくる。一晩話し合った二人はブラジルへ行くという男に連れて行ってくれと言う。だが最後に出るとき箱だけの中身のない遺骨を燃やした時友子は狂い家を焼いてしまう。

 男は、ブラジル行きを止め、自分を友子の三人目の男にしてくれと言う。二人は結婚し家跡を畑にして麦を作る。そして麦は一面実る。

 麦は、人を国民を殺す国家に対する抗議と生きざまの象徴なんだ。

 この映画は人を大きく揺すぶる。

 大竹しのぶの、その迫力の演技に打ちのめされる。彼女は最愛の夫の徴兵への旅立ちを追う。弟の結婚の運命に叫ぶ。夫の託したときの言動と死への転属を聞き国と戦争を呪う。胸をわしづかみにされる。

 大竹しのぶは完成披露の時、「ぜひ、次の"最後の作品"に出たい。」と言った。それはついにかなわなかったが、次を望んでいたのは彼女だけではない。

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【2012/06/10 03:02】 | 映画
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