WHOが、フェーズ4へ警戒レベルを上げるのを見送ったのは、メキシコでしか死者が出てないためだと思われる。

 今回の豚インフルエンザは、動物から人へダイレクト感染して、いま人から人へうつる能力を獲得した。こういう過程で人から人への感染の中でも、ウイルスはまた急激に変化して新たな能力を獲得する。どの程度毒性が強く強力なものになるか、まだわからないのだ。

 なお、豚肉を食べただけではウイルスに感染した例はないし、加熱したらウイルスは死ぬ。

 今回のメキシコでの豚インフルエンザ感染者千人の半数は医療従事者のようだ。患者周辺に接触した医療関係者に広がったらしい。2003年に香港で本格感染がまず医療関係者の感染と死亡から起こったサーズの時を思い出す。

 また、メキシコでふだんは体力のない老人と子供に感染するが、普通は軽症で済む若者が死亡しているが、米失病対策センター(CDC)リチャード・ベッサー所長代行によると、「パンデミックの場合にみられる特徴の一つ」とのことである。
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4月22日、ワシントンポスト紙は次のように論評している。
「先月末にカリフォルニア州、サンジエゴ周辺で新型ブタインフルエンザが2人に感染した異常な状況を、公衆衛生当局では調査中である。これら2例は小児であるが、ほぼ同時に発生したが、両例ともブタとの接触もなく、またお互いに出会ったこともな」い。

 発病した10歳の少年と9歳の少女の家族の中からも、発熱や咳の様なインフルエンザ症状が出ていることから、家族内感染も疑われている。二人とも軽症である。
 また少年は症状がある間にテキサスを航空機で移動したことから、搭乗者や接触した可能性のある人々の追跡調査がなされている。

 二人とも豚との接触がないところから人から感染したものと思われる。

 また、CDCでは検体が届いた当日にブタインフルエンザウイルスA(H1N1)であることを確認した。
ウイルスの遺伝子分析では、遺伝子の再集合という希な現象が起きていたようだ。

 つまり、2種類のウイルスが同一細胞に感染し、両ウイルスの遺伝子組み換えが起きる現象である。インフルエンザウイルスの8本の遺伝子鎖のうち、6本が北米で感染を繰り返しているブタインフルエンザの遺伝子で、2本がユーラシア大陸のウイルス由来であった。これまで世界で見つかったことのない遺伝子構成であり、新型ブタインフルエンザウイルスである。
-----------------参考資料(1)
 [スペイン風邪の解説]
 過去のスペイン風邪について知っておくことが重要なので解説する。スペイン風邪は、実は米国のシカゴ付近で1918年3月に発生した。ただし情報が第一次世界大戦中で中立国で検閲がなかったスペインから流れてきたのでスペイン風邪という紛らわしい名前が付けられた。人類が初めて体験したパンデミック、世界的感染爆発であった。なお他の世界的感染症であるペストも14世紀に大流行したがヨーロッパ中心である。

 感染者は6億人、死者は4000万-1億人、当時の世界人口は8-12億人と推計されているので、全人類の実に50%以上がスペイン風邪に感染したことになる。日本では当時の人口5500万人に対し39万人が死亡、米国でも50万人が死亡した。

(遺伝子により復元されたスペイン風邪ウイルス)
2005年復元スペイン風邪
 3期にわたり繰り返しの大流行があった。
 
 まず前段階としてニワトリの大量死。

○第1期は1918年3月に米国シカゴ付近で最初の発生があり流行した。やがて第一次世界大戦での米軍のヨーロッパ進軍とともに大西洋を渡り、5、6月にヨーロッパで流行した。

○第2期が重要で、同年8月にアフリカで強毒性(専門的には高原性)のウイルスに変化して、1918年秋にほぼ世界中で同時に再流行が起こり、病原性が強まって重症な合併症を起こし死者が急増した。

○第3期は1919年春から秋にかけて世界的に流行した。日本ではこの第3期が一番被害が大きかった。
-----------------参考資料(2)

 このウイルス研究が大きく進んだのは、それまで遺伝子の断片しかなく研究しようがなかった。1978年にアラスカ州の永久凍土の中に埋葬され自然保存された1918年にスペイン風邪で亡くなった4人の遺体からスペイン風邪のウイルスが抽出され、完全なDNAが手に入り解析されてN1H1亜型であることが判明した。

 しかも、1918年の流行直前に米国でニワトリが大量死していて、2008年2月には、その時の原因ウイルスがこのスペイン風邪ウイルスのDNAとほぼ同一であることが確認された。それでスペイン風邪が鳥インフルエンザであり、鳥から人への種を超えたダイレクト感染が起きていたことが判明したのだ。

 これで人類にとって初めての感染症でだれも免疫を持っていなくて死者が激増したことがわかった。

 豚と鳥とは違うが型は同じである。また第一次世界大戦のために世界的移動が行われるなど最初のグローバル化により激しいパンデミックとなった。

(以下、今日または深夜の状況に応じて変更・追記)



◎参考資料
(1)「鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集」パンデミックインフルエンザ- アラート 情報 2009/4/23

(2)Wikipedia「スペインかぜ

国疾病予防管理センター (CDC) 発豚インフルエンザ情報動画。

日本語訳字幕を付けていただいてます。出ていない時は動画ウインドウ右下三角▲をクリックしてcaptionキャプションをonオンで字幕が出ます。

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【2009/04/26 13:01】 | 病気流行、パンデミック
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